為替相場は円弱気派が姿を消す

QE2終了とともに担界でしぼむ金余りムード

外国為替市場では円はいずれ下げ歩調をたどるとの声が相変わらず多い。日本が経済成長のエネルギーや金利水準の点で当分、他の国に見劣りする公算が大きいためだ。一方で米英やユーロ圈の腰とて到底、磐石とはいいがたい。円売りの戦略をとるつもりなら「選球眼」を磨いておきたい。

 

日本では生産や輸出セクターに復活の兆しがうかがえる半面、内需はしばらくは滞るとの懸念が濃い。しかも政治はドタバタ劇の真っ最中。国主導の施策は後手後手に回りがちだ。日銀は景気を支えるべく金融緩和のスタンスを維持せざるを得ず、民間企業や個人、年金などには母国での運用を抑え、オセアニア地域や欧米に目を向けて収益を積みあげたいとのニーズが必ずある。

 

また円か借り入れ併用の投資における「マネー供給源」の座を譲る可能性は、とりあえずは意識せずともよさそうだ。

 

ポイントはお金がスムーズに流れるかだ。物色対象の通貨や債券、株の相場はしばしば自らの望みとは逆に振れ、損失をもたらすとわかったうえで取引する層が増えれば円は沈みやすい。

 

円の弱気派はこの前提で、東日本大震災で生じた部品不足などのトラブル収束や燃料価格の落ち着きを念頭に置きつつ「米経済は立ち直りの軌道に乗り、円は対米ドルでも軟化する。 2011年の末にかけて1ドル=90円を目指す」といったシナリオも描ける。

 

ただ、事はすんなりとは運ぶまい。米国では雇用情勢が所得の伸びを伴い改善してゆくとの楽観はまだ難しい。住宅部門はアキレス腱のまま。仮に差し押さえ物件の処理が進み住宅ローンの審査は甘くなったとしても、家のような寸う張る商品が右から左にどんどん売れていくはずはなかろう。

 

さらに米連邦準備理事会(FRB)は6月末で量的緩和策(QE)の第2弾(QE2)を終えた。新興国ではインフレ阻止に傾く中央銀行がいくっもあらわれ世界全体でカネ余りのムードがしぼむとともに中国やインドなどの景気の慎重論も誘った。日米からアジアなどへの資金移動が細ると「調達通貨」の円と米ドルには追い風が吹く。

 

円と米ドルの関係では「米独自の悪材料と円・オーストラリア(豪)ドルなどの反発余地を考慮すれば答えは「円高・米ドル安」しかし「11年夏に円は独歩高も」との指定をする為替ディラーも多いようだ。

 

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『消去法の円買い』の威光、いまだ健在

中には結局は円安・米ドル高になびくと読む人もいる。第一生命経済研究所の鴬峰義清・主席エコノミストは「FRBは秋口にはQE第3弾(QE3)の検討を始めるかバーナンキ議長ら幹部が『観測気球』をあげると思う。米国株を支えるとともに消費を促してドル・円にはプラスに働く」などと述べたうえで11年度の末までに1ドル=90円に迫ると予想していた。

 

しかし好循環が定着するまでには紆余曲折が避けられそ引こない。「QE3を織り込む形で『米ドル安』の圧力がかかると円もドルに対し優位にたつ」と推測。1ドル=80円超の水準に再び達する展開をイメージする。

 

ユーロ圏ではギリシャやポルトガル、アイルランドで厳しい財政状況が続く。主要国ドイツとフランスの経済や金融機関に負の影響が及ぶ危険と依然、隣りあわせだ。「7月以降、ギリシャ支援の枠組みが固まるほか欧州中央銀行は追加の利上げに踏み切り、ユーロはかなり戻すと踏んでいる」との立場ながら「ギリシヤでは新たに何か起こるか知れたものでなくなおも警戒は必要」と話す。どこからビーンボールが飛んでくるかわからぬのに悠然と構えていてはおそらくケガをする。

 

政府の収支構造の問題はほかにも存在する。とりわけ米国では赤字額を縮められずに時がたち、穴埋めにアジアや中東の力を借りて久しい。「ギリシヤと米国の債務にかかわるリスクには常に備えておく」べきだろう。

 

日本は国の懐は寂しい限りだが家計や事業法人はさしあたり余裕をキープしている。「消去法の円買い」の威光はひところに比べ和らいだとはいえ健在といえる。

 

英国では景気に心配の種が残るにもかかわらずインフレの足音が忍び寄る。英中銀イングランド銀行の悩みは深い。英ポンドをあえて選ぶメリットは現段階では乏しい。そもそもポンドの商いではかなりの頻度で投機筋らの揺さぶりにあうはずだ。いつでも逃げだせるようにしておいたほうがいい。

 

豪州やカナダは資源国として堅ろうな基盤を有するがそれぞれ「お得意先」の中国と米国の屋台骨がぐらつくと痛い。豪ドルはかつて買いが膨らんだ分だけ調整のマグマをためてもいる。カナダドルは預金金利などに妙味が今ひとつ。

 

最近はスイスフランがリスクを避けようとするマネーの「駆け込み寺」の様相を呈しているものの、豪ドルに似てマインドの偏りは波乱の芽を育てる。深迫いは禁物だ。