ドル円の円高シナリオとは

ドル/円の鍵を握る米景気指標サプライズ

「米株高なら円安」という解説が散見される。いわゆる「リスク・オンなら円売り」との経験則だが、これは局面によっては間違いやすいので注意を要する。例えば昨年の秋口、米国の金融緩和期待で株価が上昇した場面では、米金利低下とドル安・円高が同時進行した。 ドル/円相場の動きを予想する際には、米金利動向に焦点を当てるのが鉄則といえる。

 

株価とドル/円相場の関係が薄れている背景には、両通貨ともゼロ金利という事情がある。「市場環境が好転すれば高金利通貨にお金が流れる」というセオリーが適用できないためだ。逆に米政策金利か十分に高まってくれば、リスク・オン=円安という構図が再度強まると予見できる。

 

米金利を予想する上では、景気指標が市場予想を上回るかどうかが一つのポイントになる。特に、雇用統計や製造業指数が重要で、これらが連続して良い方向の「サプライズ」を与える際には、米金利上昇とドル高・円安が進みやすい。

 

当面注目すべきポイントは、米国がいわゆる「ソフトパッチムぬかるみ」から脱するかどうかだろう。これまでの同国統計指標の弱含みは、(1)日本発のサプライチェーン問題Aガソリン価格高騰による消費下押し4、5月の竜巻大量発生という一時的要因の影響を受けていた。

 

市場に大きな失望をもたらした6月の雇用統計も例外ではないと見ている。今後は、徐々にこれらの要因が剥落し、指標が市場予想を上回るケースが増えてくるだろう。向こう3ヵ月間のドル/円相場レンジは78〜84円を予想する。 ドル/円戦略は、「押し目買いは積極的に利食いは急がずに」が基本と考えている。

 

最大の円高リスクは、FRB(米連邦準備理事会)による量的緩和の第三弾(QE3)への思惑だろう。だが、QE2導入が決定された2010年秋口と現局面では、インフレの状況が決定的に異なる。

 

FRBが重視する物価指標「コアPCEデフレーター」の前年比伸び率が持ち直しを続ける限り、QE3が真剣に検討されることはないだろう。逆に仮に同指標が下落し始めればQE3観測、米金利低下、ドル安・円高というリスクシナリオが現実味を帯びてくるため、注意が必要だ。